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第3章 BPSDの対処法はどうするの?
認知症に伴う行動心理症状(BPSD)には、精神症状と行動障害があります。精神症状には抑うつ、不安、緊張、焦燥(思うように行かずいらだつ)、妄想、幻覚があり、面接によって評価します。行動障害には、落ち着つきのなさ、暴言、暴力、徘徊、不適切な行動があり、観察によって評価します。
対処法は一律に論じることはできず、患者の個性によって異なってきます。一般的には、「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第2版)」が、有用と思います。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000140619.pdf
ケアマネージャーが見ても参考になると思います。この中で、向精神薬(抗認知症薬、抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、抗不安薬、睡眠導入薬など)は、認知症を専門とする医師により診断と治療方針を踏まえて使用されることを推奨するとあります。
BPSD対処の第1番目は、「出現時間、誘因、環境要因などの特徴を探り、家族や介護スタッフとその改善を探る」ことです。確認すべきことは、①感染症、脱水、各種の痛み、視覚・聴覚障害等のせん妄の原因となる身体要因の有無、②以前からの精神疾患の有無(→あれば精神科受診の必要)、③服薬中の薬物、④服薬遵守の確認、⑤抗精神病薬を使用するに当たっては、適応外使用も含めて、当事者よりのインフォームドコンセントを得ること、などです。そして、外来通院で薬物療法をするためには、「低用量で開始し、症状をみながら漸増する」ことが必要となり、一朝一夕では改善はしないことを知るべきです。
副作用として、高齢認知症患者への抗精神病薬投与により死亡率が1.6~1.7倍高くなる。また、転倒や・骨折のリスクも高まるので注意を要する。