認知症FAQ

11) BPSDでふりまわされながらも頑張っている家族にどこまで頑張ってもらえばいいのか?どう寄り添っていったらいいのか?

家族には頑張る必要はないと言って下さい。如何に逃げるかです。逃げるための方策をいろいろ提示してあげて下さい。BPSDによりますが、うまく付き合って行くことも必要です。その方策も家族にアドバイスして下さい。経済的な状況も配慮して、できうる限り家族の負担を減らし、ソフトランディングできるように、「うまくやっていく」ことができるようにしてあげて下さい。

12) ケアマネはどのようにアドバイスし、治療はどのようにするのでしょうか?

ケアマネは認知症に対する介護サービスを熟知しておいて下さい。本人・家族の生活が破綻しないようにするために、経済的な問題も考慮の上、介護サービスの利用を促して下さい。家族に精神的な余裕を与えるためには、離れている時間を作ることも必要です。本人の要望のみならず、家族の希望も十分聞いて下さい。また、デイサービス、デイケア等の介護サービスを利用している方の場合は、情報を集約して下さい。認知症患者のケアプランは、本人重視ではなく、家族の負担も軽減されるようなプランを立てることが重要と思います。負担が減れば、その分患者に優しくなれると思います。介護サービスを利用すること、日常生活における対応も認知症治療の一部です。

13) 認知症を疑い始めた場合、どの程度で受診するのが良いでしょうか?

可能な限り早いほうがよいと思います。病名をつけてしまう場合もありますが、フォローは必要と考えています。実際、経過観察していて、ほとんど悪化しない方、改善する方もいます。介入することで改善したのか、元々、問題がなかったのかわかりません。

14) 意思決定ができる・できないの判断根拠等

コミュニケーション能力が低下すれば、意思決定不能と言えますが、軽度・中等度の認知症の患者さんは、自分の意思はあり、その場での決定はできると考えます。但し、財産の管理に関しては、さまざまな状況を判定した上で、決定をする必要があります。しかしながら、認知症の人は、直近の自分の周りの状況を記憶に保持することができていません。また、自身の下した決定内容も保持できません。例えば、認知症と知りながら、自筆遺言書を書かされた例もありました。詐欺事件などでも、認知症患者は騙される確率が高いのではないでしょうか?診察でも多少誇張して説明したり、話を合わせたりすることも多々あります。
 とにかく、認知症の人は自分の意思はありますが、その場の決定事項は保持されず、変化しうることを理解して下さい。そのため、近時記憶の低下が顕著な方の場合、成年後見制度における類型は「後見」にする場合が圧倒的に多くなります。
実際、後見人が決まった途端に施設に入所させられるケースも散見されます。さまざまな立場があり、何とも申し上げにくいのですが、「何が本人にとって幸せだったのかな」と感じることもあります。

15) 認知症は改善できるのか?

原因疾患によります。だから、しっかりと診断をする必要があります。もっと頻度の高いアルツハイマー型認知症は、現状では疾患自体を治療することはできません。神経伝達物質の調整によって、改善ではなく、進行を緩やかにすることだけです。

16) 認知症にならない脳のタイプ どんな人がなりにくいのか?

これは答えに困ります。第7章でも述べましたが、社会に関わり、運動をしている人でも認知症になってしまいます。遺伝的要因も重要かもしれません。但し、予備脳(?)力を高めることは重要です。実際、教育歴の長さは認知機能検査に影響を与えます。年を取っても、さまざまなことに興味を持って続けていくことは、認知症の発症を抑えると考えています。

17) サービス付き高齢者住宅で、認知症の方が入居について受け入れていないことが多い。家族がご本人に説明した際には、入居に関して納得しているが、いざ入居すると、「帰りたい」と言い、帰った(持ち家)方がいます。家族は自宅の介護は限界にです。どのように接したら、本人が入居に納得するか?

認知症の患者さんはこんなもんです。先に述べたように、自分の決定内容を覚えていないのです。とにかく、自宅での介護が限界であるなら、家に帰すことは考えずに、慣れてもらうこと考えるべきだと思います。一旦は納得して入居したわけですから、入居の意味はわかるはずです。始めに入居を考慮した理由、納得したときの説明内容を振り返ってみて下さい。キーワードがあるはずです。認知症になっても、家族に迷惑をかけたくないという思いはあります。この点を突いてみてはいかがでしょうか。

18) ケアマネが主治医の意見を聞いたり、現状を伝えたりしたい場合、どうしたらよいか?

最も確実な方法は、患者と同行することだと思います。あらかじめ、患者とは別に話をしたい場合は、そのことをあらかじめ、事務または看護師に伝えておくことも必要です。また、要点をメモしておいていただければ効率的です。

19) 大学病院等の主治医と訪問診療をつなぐ場合、公的な仲介機関はありますか?

大学病院の場合は、その病院の医療連携室を経由するのがよいと思います。可能であれば、何故、訪問診療をするかの理由を記載することも大切です。疾患によっては、画像診断のフォローが必要な場合もあります。
 一つの考え方ですが、訪問診療の選択は、個人的にはACPと関わるものと考えています。即ち、病院に通院することができない程、悪くなってしまったから、在宅診療を選択したと言うことです。それなら、今後の診療は在宅でできる加療に限定するということではないのでしょうか?

20) 夜中に大声で家族を起こすアルツハイマー型認知症の方がいて、アリセプトからメマリーに薬を変更し(10日間ほどで落ち着いた)。それぞれの薬の特徴と、変えた薬がどのくらいで効き始めるのか?

大前提として、薬の効果は個人差があるということを認識して下さい。このケースでは、アリセプトをメマリーに変更したら良かったということで、すべてに当てはまるわけではありません。メマリー(メマンチン)は、副作用としてめまいと眠気があります。これが奏功した可能性はあります。このケースでの、投薬の選択肢は、メマリーの追加という処方もあったはずです。大声で家族を起こし始めてから、何日で処方変更に至ったか等も重要な情報です。認知症の進行予防には、アリセプト(ドネペジル)とメマリー(メマンチン)の併用が良いというエビデンスもあります。
 基本的に薬の薬効に関しては、上市されればあとはエビデンスより体験談がメインになってきます。それを、エビデンスとするのは大変な労力がいります。
 抗認知症薬の特徴に関しては今言ったとおり、体験談が中心となり、エビデンスとしては大差ないと言うことになると思います。

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